生成AI×実写の合成:“それっぽさ”の鍵はノイズ

0. 結論(最短版)

  • 順序Denoise(実写)→合成→Grade→Regrain(全体)→最終微調整
  • 設計Luma>Chroma中間調>シャドウ/ハイライトフレーム間で少し揺れる(時系列ノイズ)
  • 目安(1080p):Luma 2–6%、Chroma=Lumaの30–60%、粒径 0.8–1.2px、時系列相関 0.7–0.9
    (4Kは粒径×2、強度は+1~2ptで微増)

1. 「バレる」主因 TOP5

  1. 実写のセンサー粒状とAI生成の無菌感が並ぶ
  2. 時間軸ノイズ(フリッカー/微ゆれ)がAI層にない
  3. 階調のバンディング(空/グラデ)に粒が乗っていない
  4. DOF/モーションブラーは合っているのにノイズの大きさが違う
  5. **色ノイズ(Chroma)**の扱いが過多/皆無で不自然

2. ノイズ設計の基本

  • 成分
    • Luma(輝度)粒=見た目のザラつきの主役
    • Chroma(色)粒=彩度の微ゆれ(多すぎると汚れ感)
  • 粒径:解像度の関数。1080p=約1px、4K=約2pxを起点に±0.3pxで合わせる
  • 分布中間調>シャドウ/ハイライト(ロールオフ曲線)
  • 時系列完全固定はNG。連番ごとに0.1–0.3の揺れを与える(“生きた”画になる)

3. 推奨パイプライン(順序が命)

  1. Denoise(実写)
    • Resolve:Temporal NR 小(2–3)、Spatial NR 微(1–2)
    • NeatVideo等でセンサーパターンを先に落とす
  2. 合成(Linear/Scene参照でも可、どちらかに統一)
    • ピンぼけ/被写界深度/シャッター角/CA/歪曲を合わせる
  3. Grade(露出・色温度・LUTの統一)
  4. Regrain仕上げ直前
    • 全体に一括でかけるのが基本(差分が消える)
    • 画面領域で強度をマスク(空=弱、肌=中、暗部=弱め)
  5. 微調整(シャープ/微ブラー/ディザー)→書き出し

バンディング対策:グラデ直前に微ディザー(0.5–1%)→H.264圧縮の破綻を防ぐ


4. ソフト別:実務レシピ

DaVinci Resolve

  • Film Grain(OpenFX)
    • Type:35mm 400T / 8mm(意図で選択)
    • Strength:Luma 0.15–0.25 / Chroma 0.07–0.15
    • Size:1080p 20–30 / 4K 40–60(画面で合わせる)
    • Texture:0.3–0.6、Grain Response:Mid重視(シャドウ/ハイライトは-10〜-30)
  • 順序:最終ノード直前(Title/ロゴは除外)

Premiere Pro

  • Noise/Grain系プラグイン(Renoiser, FilmConvert Nitrate 等)
    • 1080p:Grain 10–20%、Softness 10–20%、Chroma 30–60%
    • オパシティでマスク(空/肌)
  • 書出し前に微ディザー(Renoiserの“anti-banding”)

After Effects

  • Match Grain / Add Grain
    • Match”:実写からサンプル→AI層へ適用(理想)
    • Add”:プリセットから Luma中心、Chromaは半分
  • 合成順:Regrainを調整レイヤーで全体に

Nuke(上級)

  • DenoiseMergeGradeGrain(Gizmoでも可)
  • Temporalノイズ:Frameごとにseedを変化させ0.1–0.3の揺れ

5. シーン別クイックレシピ

  1. スマホ実写+AI空差し替え
    • 実写を軽くNR→空を合成→全体Regrain
    • 空は粒弱(Luma 0.08–0.12)・Chromaさらに弱
  2. 人物トーキング+AI背景
    • 背景の粒を人物より弱く(被写体優先)
    • 肌はChroma粒を抑制、Luma微増で“生”感
  3. 製品実写+AIハイライト演出
    • 反射面は粒が目立ちやすい→Luma粒小さめ(0.8–1.0px)、強度は中
    • ハイライト域は粒レスOR半分(白飛び感を避ける)

6. よくあるNG→即修正

  • 全フレーム同じ粒(静止)時系列揺れを入れる
  • Chroma粒が強すぎて汚い → Chroma=Lumaの1/3–1/2
  • シャドウがザラつく → シャドウでロールオフ、Luma-20〜-40
  • 粒が大きすぎ → 解像度に対して**粒径1px(1080p)/2px(4K)**を基準に再調整
  • 圧縮で潰れるディザービットレート上げる(縦1080×1920なら10–16Mbps)

7. 初期プリセット(スターター)

  • 1080×1920(縦)
    • Luma 0.18 / Chroma 0.09 / Size 1.0px / Temporal 0.8 / Mid重視
  • 4K(縦2160×3840)
    • Luma 0.22 / Chroma 0.11 / Size 2.0px / Temporal 0.8 / Mid重視
  • 人物優先:肌だけ Luma+0.02、Chroma-0.03、空は Luma-0.05

8. 1分チェックリスト(納品直前)

  • Denoise→合成→Grade→Regrainの順序
  • 粒径は解像度基準(1080p≈1px/4K≈2px)
  • 中間調>シャドウ/ハイライトの強度カーブ
  • ChromaはLumaの半分前後
  • 時系列の揺れ(seed変化)あり
  • グラデには微ディザー
  • タイトル/ロゴは粒除外

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