0. まず押さえる用語(1分で復習)
- 著作権(作詞/作曲)と原盤権(録音物):BGMは両輪。
- ライセンス:利用を許可する契約(媒体・地域・期間・用途・席数)。
- PRO(著作権管理団体):JASRAC/NexTone等。放送や店内BGMで演奏権が関係。
- Content ID/クレーム:YouTube/Meta等の自動検出仕組み。証跡で正当化が必要。
- Foley/SE:足音・風音なども録音物。ストックからの利用はBGM同様にライセンス確認。
1. ライセンス形態の基本
- ロイヤリティフリー(買い切り/1点)
- 楽曲ごとに購入。1案件=1ライセンスが原則。
- 二次利用(別案件/別媒体)は追加ライセンスになりやすい。
- サブスク(定額DL)
- 期間中にDL→公開済み作品はライセンス存続が一般的。ただし**“契約中に公開”**等の条件あり。
- クリエイター個人の席かクライアント案件も含む席かは必ず確認(よく違う)。
- カスタム/直契約
- 広告・大型案件で独占/セミ独占、地域/期間の広さに応じて見積。
- 改変権(編集・歌詞差替)や配信プラットフォームを明記。
NG:市販CDや既存曲の“耳コピ/カバー”を無許諾使用。**著作権(楽曲)+原盤(録音物)**両方に触れる。
2. 見積・SOWで必ず合意する項目(コピペ用)
- 媒体:Web(YouTube/Instagram/サイト内)/アプリ/OOH/TV等
- 地域:日本国内/全世界
- 期間:12か月/無期限(ストック規約に沿う)
- 用途:オーガニック投稿/広告出稿(ブースト)/有料配布
- 席/責任:ライセンスの名義者(制作者 or クライアント)
- 二次利用:他案件転用の可否(原則不可)
- 改変:尺調整/ループ/フェード/ピッチ変更の可否
- クレジット:必要表記・クレジット例
- 証跡:ライセンス証明書(PDF/URL) の保管場所・保管者
3. よくあるリスク12 & 回避法
- 広告ブースト時の想定漏れ → 事前にAds OKかチェック。
- 席の違反(個人席でクライアント案件) → Business/Client席にアップグレード。
- 動画の再編集/二次利用 → **“公開作品内のみ”**等の条件をSOWに転記。
- 素材の再配布(SEパック同梱) → 再配布NGが一般的。
- 曲の改変範囲不明 → 尺編集/ループはOK、メロディ改変不可等を明文化。
- PRO楽曲の演奏権 → 放送・店内BGMで利用申請/利用料が発生することがある。
- Content IDクレーム → ライセンス証跡とクレーム解除フォームを準備(後述)。
- 共同制作での席問題 → 席の共有はNG。名義者1名を決め、他はサブライセンスの可否を確認。
- サブスク解約後の差替要求 → **“公開済みは存続”**の条項を契約・合意メールに残す。
- SEの著作権 → フリー配布でも商用可/改変可/クレジット要など条件確認。
- 歌ってみた/二次創作 → 元曲の権利元に当たる(配布不可が通常)。
- AI生成・学習 → 第三者素材を学習させないことを明記(クライアント素材は学習に使わない)。
4. 取得フロー(制作者=あなたがライセンス手配する場合)
- 曲候補を共有(URL)→用途(媒体/地域/期間/広告有無)を添えてクライアント合意
- 席・名義を確定(クライアント名義推奨/別案件転用を防ぐ)
- ライセンス証跡をDL(PDF/購入ID/契約URL)
- 編集(OK範囲内:ループ/フェード/尺調整 など)
- 公開前にクレーム解除用タスク(テンプレ下記)
- 納品フォルダに楽曲・証跡・契約書を保存(下記の証跡セット)
証跡セット(納品ごとに1フォルダ)
/music_license/
  01_license_certificate.pdf
  02_purchase_id.txt(購入先・ID・日付)
  03_terms_snapshot.pdf(規約キャプチャ)
  04_song_info.txt(曲名・作曲者・原盤ID)
  05_request_log.txt(クレーム対応履歴)
5. プラットフォーム別:クレームへの実務対応
YouTube
- 手順:クレーム表示 → **“ライセンスを保有”**で異議 → 証跡PDF/購入IDを提示。
- 一部ストックはホワイトリスト登録が必要(申請フォームあり)。
- 公開後にライブラリ側がID登録してクレーム化するケースも。再申請の窓口を記録。
Instagram / Facebook(Reels, Ads)
- 広告アカウントの配下で配信する際、広告可のライセンスタイプかを最優先チェック。
- クリエイター投稿→ブランド主催のブーストに切り替わるとNGになる規約もある(“広告不可/ブースト不可”表記に注意)。
TikTok
- 商用サウンド制限で使えない曲が多い。ストック/自社音源を推奨。
6. ストック系の“要チェック項目”早見
- 商用利用可(Client work含むか)
- 広告配信可/不可(Boost/Ad)
- 席(Seat):個人席?チーム席?クライアント名義?
- 配信後の存続(解約後もPublished ProjectsはOK?)
- サブライセンス(制作物に組込みOKか/音源単体の再配布NG)
- Content ID/ホワイトリスト手続きの有無
- クレジット義務(必要な場合の表記)
- 地域/期間/媒体(All media/Worldwide/Perpetualか)
代表的なサービス(例:Epidemic Sound/Artlist/Envato系/Motion Array など)の細則は必ず規約で再確認。同名プランでも広告の扱い・席の範囲が異なります。
7. クレジット表記テンプレ
- 英語:Music: “Title” by Composer (Library), Licensed for use
- 日本語:音源:「曲名」 作曲:○○(ライブラリ名)/本映像の使用許諾取得済み
クレジット不要でも台本・動画情報欄にメモしておくと、後の権利確認がスムーズ。
8. 契約条項ひな形(制作側の業務委託契約に追記)
(音源ライセンス)
乙は本件制作物に使用する音源について、許諾範囲(媒体/地域/期間/広告の有無/席)を確認し、適法なライセンスを取得する。許諾の証憑(購入ID・証明書・規約URL・日付)を甲へ提示するものとする。
(広告出稿時の扱い)
広告配信・ブースト等、用途変更により追加ライセンスが必要な場合は、甲の負担とし、乙は適切な見積を提示の上、作業を実施する。
(素材・再配布禁止)
音源・効果音ファイルそのものの再配布は禁止とする。制作物への組込みに限り許諾される。
(紛争対応)
コンテンツID等による差止・非公開措置が発生した場合、乙は速やかに証憑をもって異議申立てを行う。必要に応じ、甲は追加情報の提供に協力する。
9. よくある相談と即レス文例
Q. 解約後に過去動画のBGMがクレーム化した
A. 証跡(公開日・契約期間・証明書)を添え、公開時点では適法である旨を窓口から申立。必要ならライブラリのホワイトリスト依頼フォームへ誘導。
Q. クライアントから“素材くれ”と言われた
A. 「音源ファイルの再配布はライセンス上不可です。動画に組み込んだ形での提供のみ可能です」と説明。必要なら別途ライセンス購入を提案。
Q. 海外向け広告に転用したい
A. 地域/媒体の拡張ライセンスが必要な可能性。元の購入先でアップグレード可否を確認。
10. 1分チェックリスト(納品前)
- 媒体/地域/期間/広告の有無をSOWで合意
- 席と名義者が適切か
- 証跡PDF・購入ID・規約URLを**/music_license/**に保存
- テロップ・SEに再配布要素がないか
- YouTube/Metaでのクレーム解除手順をメモ
- クレジット表記の要否を確認
まとめ
- 媒体/地域/期間/広告/席/改変の6点を先に決める
- 証跡保管とクレーム対応フローをテンプレ化
- 規約はサービスごとに差が大きい。案件ごとに必ず一次情報を確認
 
      
 
  
  
  
  
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